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 愛しすぎた故の末路
© あこ 
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「もう別れよう」
 彼は驚いた顔でこちらを見たと思ったらふいに諦めたような、安堵の表情を浮かべていた。
 無理もない。彼をここまで追いつめたのは自分なのだから。
 これでよかったんだ。じゃないと自分はきっとダメになる。これ以上彼を追いつめてはいけない。
 だから自ら関係を絶ち、もうこれで終わりにしようと思った。

 古川孝(フルカワコウ)の川上卓真(カワカミタクマ)への執着は異常だった。ずっと友人だった卓真と付き合うことになって、幸せだと思うと同時に不安を抱くようになった。ただでさえ男同士で世間の目は冷たいというのに、果たして彼はずっと一緒にいてくれるのだろうか?
 一度考えると止まらなくて、あとはずっと卓真に捨てられてしまったらとか本当に自分は好かれているのだろうかとか、次第に不安は恐怖に変わっていった。
 そしてついに、孝が別れを切り出す事件が起きてしまった。―孝は卓真を監禁した。自分がおかしいと思っていたが、止められなかった。むしろ、このままずっと卓真をここに閉じこめてしまいたいとさえ思ってしまった。
 このままじゃいけない。そう思って卓真と別れを切り出した。

 卓真と別れても孝の卓真への執着は相変わらず変わらなかった。卓真のことばかり考えて何も手につかない。
「ダメだ…ダメだ…」
 何度も呟くが、この感情を抑えることができない。せめて顔が見たい、一目見るだけでいい、気づかれないように見れば大丈夫かもしれない、そうしたら…。

 孝は卓真のバイト先に来ていた。卓真は今日シフトに入っていてそろそろ帰る時間のはずだ。
 案の定、卓真は店からでてきた。孝は迷いもなく卓真のあとをつけた。
 見るだけ、見るだけと思っていたのに、いざ姿を見るとずっと見ていたいという気持ちが勝って、あとを追わずにはいられなかった。だめだ。やめろ。もうだめだと思うのに彼を追うことをやめられない。
 気づかれずについに卓真のマンションまできてしまった。階段を上がる。他に人はおらず、卓真と二人きりだった。孝はだんだん足早になっていった。このままでは気づかれてしまう、だめだ、わかっているのに気づいたら卓真のすぐ真後ろにきていた。部屋に入ろうとしていた卓真が振り返り、青ざめた顔をしてこちらを見る。孝は卓真を無理矢理部屋に入れ、ドアの鍵を閉めた。
「…もう一生逃がさない」


END








2009/08/22
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