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 離さないで
© 桜 黒蜜 
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「ッ...」

首筋にピリッと痛みが走った

「あっん...捨て、ない..でっ」

背中が痛い。腕が痛い。

シーツで背中を擦るたび、ピリピリと鈍い痛みが走る

でも動きをやめるわけにはいかない

「捨てないから..大丈夫だから。ほら、手力抜いて」

腕に食い込んでいた指が離れた

ぎゅっと抱き締め腰の動きを速める


------

顔を涙で濡らしながらも落ちついて眠っている千歳(チトセ)を横に、俺は改めて自分の身体を見た

腿、腹、腕、首、背中..

至るところにある歯形と爪痕


「離さないで」
「離れないで」
「捨てないで」
「一緒にいて」
「一緒にいたい」

最中にこんな単語を発しだしたらもう止められない

ぼろぼろと大粒の涙を流し、手当たり次第に俺の身体を掴む

そして、泣きながら呟き続け"離したくない"と言うように、爪を食い込ませ始める

それでも足りない時は、噛みつき絶対に離れようとしない

「大丈夫..大丈夫だから。離さないから...」

ぎゅっと抱き締め落ち着かせようとしても効果はない

だから、快感に、快楽に、溺れさせてやる

俺から離れないように



「目覚めた?」

「んー、色々痛い..」

「はは、ごめんごめん」

「あ、..俺また...」

つー、と自分がつけた歯形を指でなぞる

「大丈夫だよ。もう馴れた」

「痛いよね。ごめん。俺、なんか悲しくなって、涙とまらなくて、頭の中ぐちゃぐちゃで...捨てられたくないから...」

「捨てるわけないだろ?俺は千歳が大好きだよ?」

「俺も、好きだよ..」

「でも、千歳が不安になるのは俺が不安にさせてるからだよね」

「そんなことない!!俺が、俺が弱いから..」

ぎゅっと体を抱き締める

そんな弱さに付け込んで

「一生一緒にいるよ」


千歳は気付いてない

俺は千歳のこと愛してるよ

離れないように、離れられないようにするのは

恋だから当たり前だよね?

痛い思いしてるんだから、このくらいいいよね?

不安にさせてごめんね?

でも、もう千歳には俺しかいないよね









2010/05/26
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