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 君の一日
© 狭霧屋 まい 
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 R指定:---
 キーワード:後輩×先輩 ストーカー 痴漢 年下攻め 高校生
 あらすじ:変な後輩×可愛い先輩。恋人になったはずの高校生。シリーズあり。
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 七時十八分。眠たそうな顔で、家を出る「五十川栄(いそがわえい)」。
 あまりにも愛らしい童顔と、それに相応しい小柄な体で、中学生にも間違われるが、高校二年生だ。
 以前は四十五分の準急を利用していたが、二十八分に変えたのは痴漢被害の多さから、らしい。
 急いで早足になるのに、時折辺りをきょろきょろと見回している。見つからないように、その都度、物陰に隠れるが。
 道筋も目的地もわかっているから、見失う心配はない。

 車中でも、しきりに辺りを警戒している。
 ガラスの反射での監視が可能なので、見つかる心配はない。可愛らしい姿を、十二分に堪能する。

 追跡も、生徒玄関までだ。学年が違うと使う廊下まで違うから、見つからずに観察するのは難しい。
 不安そうな背中を、見送るに止める。

 教室移動、休憩時間など。彼の行動パターンから推測し、探索。発見即観察する。
 クラスメイトとの戯れ合いで顔を赤らめ、痴漢にあった時と似た表情になる。
 心中穏やかではない。
 しかし、観察者は接触は許されない。
 猫パンチに似た報復をする五十川に、溜飲が下がる。

 放課後。
 やはり辺りを警戒しながら、帰路に着く。
 登校時ほど混んではいない電車で、席を確保する。
 鞄を抱え、車窓に目を向けた。常々感心するのだが、彼は座席に着いた際は、己の荷物を必ず膝に載せ、余分な空間を占有すまいと努める。
 保護欲をそそるナキウサギ的外見とともに、彼の魅力となっている。

 駅から離れるに従い、人通りが減っていく住宅街を、周りを警戒しながら歩いていく。

 あと五メートル程で自宅玄関、となった辺りで彼は振り返り叫んだ。
「稲垣!」
「呼ばないでください」
 いきなりのルール違反に、俺は肩をすくめる。
「ストーカーごっこなんて、もう嫌だ。近くにいるのに、一緒にいれないなんて、最悪……」
 真っ赤になってこちらを睨んで、大きな目は泣きだしそうに潤んでいる。
 世界一、可愛らしい。
「そんなに嫌なら、やめてもいいですよ」
「じゃあ、二度とやるな!」
 近づいて、伸ばされる手に応じる。
「その代わり、痴漢ごっこはまたやらせてくれますね?」
 抱きついてきてる体の、尻を撫でる。
「おまえ……」
「ね?」
 元はと言えば彼が、それが嫌だと言い出したからこそ、違う「ごっこ」にしたのだから。
「月一回、なら」
「足りません」
「月…二回?」
「週二回以上、いいですよね?」
「やだっ!そんなになんか、絶対いやだー!」
 ばたばたと、腹に可愛らしい猫パンチ。
「じゃあ週一回でいいですから。栄、愛してます、ね?」
 ぴたりと、動きが止まる。
「もっかい言え」
「はい?」
「もう一回……」
 本当に、可愛い。
「愛してます、栄」
 そんな言葉が、好きだなんて。
「週一回、だ」
「はい」
「嫌だって言ったら、やめろよ」
「はい」
「稲垣……」
 覆いかぶさるようにキスをしたら、嬉しそうに震える。

 世界一可愛い、俺の恋人。

END








2007/02/04
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