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 イルカ日和
© とらねこ 
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 R指定:無し
 キーワード:学生
 あらすじ:すれ違いで別れた恋人を思い出す涼一。
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イルカが好き、なんて。直人は古くさいことを言う男だった。

引っ越しのために荷物を整理していた涼一は、机の引き出しから包装された箱を見つける。
「あ」
別れた恋人、直人からの贈り物のネックレスだった。気恥ずかしくてつけたことはないが。
胸がきゅっと締め付けられる。捨てようと思ったのに、無邪気なイルカの顔が愛くるしくてできなかった。

直人は結局、女性と付き合うことを選んだ。
「それが普通だろ」
男同士なんておかしい、癖になってしまっただけで、離れれば消える感情だと。
半年も経つのに忘れられないのは、本物の恋だったから。教えたくとも、もう連絡は取れない。妄執に捕われ、迷惑になりたくなくて、涼一は携帯を変えた。共通の友人とも距離を置いた。

男だからとか、女だからじゃない。ひたむきな直人が好きだった。
水族館に行き、お揃いのペンを買った。ネックレスは後からもらったものだ。
「涼一、イルカ好きだろ」
恋人に贈るのが夢だったと直人は笑う。古くさいと指摘すると、あれっと首を傾げた。
「ドラマで研究したんだけどな」
母の推しだったらしい。何を見たのかは未だに謎だ。

明日からまた新しい日々が始まる。直人のことも、時間が癒してくれるだろう。
もう少しだけいいかな。イルカを嫌いになれなくても。せめて次の恋をするまで。

共に見た水槽は、記憶の中できらきらと優しい光を放っている。イルカのネックレスと同じ、半透明の淡い色で。







2012/01/31
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