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 DOLLS
© 陸 
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 R指定:無し
 キーワード:切な 強姦 別れ
 あらすじ:いつもお前は笑っていたのに、それを今はけして見る事はできないんだ
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「俺、まじお前の事好きだよ!」


お前はそう明るい顔で笑ってくれた。




もうその顔は決して見れない。











【DOLLS】











薄暗い小さな部屋。
テレビの砂嵐の音だけが強くなりひびく。


少し開いたカーテンの間からわずかな光が照らし、部屋を舞うホコリがくっきりと見える。





隣の部屋からは水の流れる音がひたすら聞こえてくる。

この音を聞くようになってから、もうどれくらいたっただろう。




服も乱れて髪もぼさぼさのまま、いつもと同じ時間に隣の部屋に顔をだす。




コンコン


………


当然返事があるはずもない。


これもいつもの事。




部屋に入ると、何も物がない殺風景なそれが広がっていた。
テレビは砂嵐。



そこにあいつの姿はない。


それもいつもの事。




「ゆうじ、ゆうじ。」


水の音が聞こえるシャワー室を開ける。


「おぅ、りゅう。」


そこには無心に水を浴び続ける一人の男。
俺の恋人だ。


「ゆうじ、もういいから。早くあがれよ。」


「だめだよ、りゅう。
ほら見てみろよ。まだこんなに汚れてるだろ。」



真っ白な白い肌にはうっすらとうかぶ無数の傷。
水を浴びすぎているゆうじの体はふやけている。


ゆうじはいつも同じ顔をしている。







あの時。
俺がこいつから表情をなくしてしまったんだ。














「なぁ、お前男と付き合ってんだって?」

「は?何いってんだよ。」

突然、今まで普通に話してた仲間が口にした言葉に唖然とする。

「そんなにいいのか?男とヤるのは。
まぁ、こんないい顔してれば間違いもあるわな。」


そういいながら見せたケータイの画面には顔に傷をおったゆうじの写真。

「な!どーゆう事だ!なんでお前が、ゆうじの写真なんかっ。」


にやにやと笑う奴らの表情が一変する。


「お前さ、なんかムカつくんだよな。
いるじゃん、クラスに一人くらいなんだかわかんないけど腹立つやつ。
お前それなんだよ。」


「は?」


何を言ってるんだ、くだらない。
いい歳した男が何をいってる。
もう立派な社会人のくせしやがって。


「ゆうじは何処だ。」

「おー、おー、そんなに急かすなよ。お前はメインのお客さんだ。
ついてこいよ。」



言われるがままについていくしかなかった。
それしかゆうじの居場所を知る方法がなかった。


頭の中を最低なシナリオばかりがよぎる。


ロープで縛られた手首が痛む。



何故こんな事になった?




人の気配を全く感じない通り。
そこにたたずむぼろい飲み屋の跡地に連れていかれた。

壁は壊され少し残された照明だけが怪しく光る。



「っゆうじ!」


目の前には両手をふさがれ、複数の男に囲まれたゆうじがいた。


「てめぇら!!!」


一気に頭に血がのぼった。
暴れようとしたが、すぐに複数の野郎に殴られ押さえ付けられた。



「ごめんなー、りゅうちゃん。
りゅうが事故ったってきーてついつい騙されちった。
しかもこいつら複数できやがるし。卑怯だよなっ。」

そう言いながらゆうじは笑っていた。


なんであいつらがゆうじの番号を知ってるんだ?


まさか…



やられた
あいつらいつのまに。



俺の目の前にひらひらとケータイをちらつかせる。


俺のだ。



血の気がひいた。



「はーい、役者がそろったところでショーターイム☆」


複数の野郎共がゆうじに群がる。
服を破られ顔を殴られ、ゆうじはレイプされた。


「やめろ!!!てめぇら!」

「黙ってみてろよ、ホモ。」

「っっ!!!」

痛みの走る方向を見た。
足には注射針がささっている。

次の瞬間、腰ががくっと床に倒れこんだ。

麻酔?

体が思うように動かない。



「くっそ、ゆうじっ」


何がなんだかわからない。
なんでゆうじが。
なんでゆうじがあんな目にあってるんだ?

唇を噛み締め、ただその行為を見る事しかできなかった。


唇から血が流れた。





跡地に響き渡る男達の歓喜の声。
ゆうじの苦しそうな喘ぎ声。


何もできない自分に怒りと吐き気。
涙を流す事しかできなかった。




一晩中ゆうじをなぶり倒し、やつらは楽しそうな笑い声を残し帰っていった。



















「あれ?りゅう。
血?服についてる。」


風呂からあがらせたゆうじが俺の服の異変に気付く。




「…ゆうじ。
お前は綺麗だよ。もう洗わなくたっていいんだよ。
あいつらはもういないんだから。」


「りゅう?」


「俺も汚れた。
だからゆうじには触れられない。
ごめんな……
お前から笑顔を奪ってごめんな。」


「りゅう?」


あ、久々にそんな顔見た。
昔はそんな顔もたくさん見たな。








パトカーの音がマンションに近づいてくるのがわかる。


「悩む事はなかったんだ、最初からこうしてればよかったんだ。
そうすればゆうじをここまで追い詰める事なんてなかったんだ。
俺がいれば嫌でも思いだしちゃうもんな?
ごめんな、もういなくなるからな。
長い間苦しませてごめんな。好きになってごめんな。」



「りゅう、りゅう?
行くな、行くな。なぁ、りゅうっ」


俺にしがみつくゆうじの体はふやけている。


こんな風にしたのは俺。




あぁ、泣くなよゆうじ。


そんな顔も久々に見たな。


最後までこんな顔しかさせてやれないなんて。



なぁ、笑ってくれよゆうじ。



なぁ、いつもみたいにさ。
ほら。





パトカーの音がやみ、彼のすすり泣く声だけが頭をいっぱいにする。






なぁ、笑ってよ。





「好きになってごめんな。



好きだよ。」








パトカーに乗る俺の背後には、いつまでも啜り泣く声がつきまとって離れてはくれなかった。







end









2007/02/13
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