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 気づいたときには、もうお互いに依存しているのです。
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   あらすじ:我が家のアイドルと友だち。
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うちの猫は食べることに無頓着である。

餌を目の前に置いてやっても、餌を置く俺の手にじゃれついてきてばかりで餌には全く興味を示さない。

「お前な、」

困ったように言うと、それが何か?とでもいうように首をかしげてこちらをみている。

猫らしくない猫だ。

食べないと後々困るのはお前だというのに。

ペロペロと俺の指を舐める小さな舌。

「はぁ」

分かってない。

他の猫に比べると、ほっそりしているように感じる我が家のアイドル。

分かってないのだ。

猫に自覚を求めるなんておかしいのは理解しているが、説教でもしたくなる。

「ずっと一緒に居たいんだよ、お前と」

お前のためを思って、なんて。

これはエゴなのか、愛なのか。

今のところ、よく分からない。







「飯はちゃんと食え」

毎日、菓子パンをかじっている友人に釘を指す。

「でも〜、こんだけ暑いとごはん食べたくない〜」

「はぁ?体力使うからこそ食わなきゃいけねぇんだろうが」

バカか、と吐き捨てると自分で暑いといっていたクセに友人が引っ付いてきた。

「まぁちゃ〜ん」

「なんだよ」

まぁちゃん、なんて可愛い名前で俺を呼ぶのはこいつ位だ。

「まぁちゃんがね、お弁当作ってくれたらちゃんと食べる」

「はぁ?」

「まぁちゃんのお弁当ならがんばって食べる」

「意味分からん」

なんで同級生の弁当をつくんなきゃいけねぇんだ、くそめんどくせぇ。

「親に頼めよ」

「まぁちゃんのが良い」


しつこいなこいつも!

腰にまきついた手に力が込められているのが分かる。

「ちゃんとごはん食べろっていったのはまぁちゃんなのに」

それとこれとは話が違うだろ。

「いいか、聞け」

「うん」

「俺がお前のために弁当を作るとする」

「わーい!」

仮に、仮にな。

「毎日俺がいれば、毎日弁当が食べられるわけだ」

「幸せな毎日」

「じゃあ、俺がいなかったらどうする」

「寂しい」

そういうことじゃねぇよ。

「俺がいないときは、弁当がないってことだろ」

「それも困る」

それも?
いや、それはいいとして。

「困るだろ」

「うん」

「自分で用意すれば、一生困ることはない。お前のためを思っていってるんだよ」

分かれよ。

まわされた腕にさらに力がかかる。

「ずるい」

「何が」

「中途半端に優しいのが、一番ずるい」

「いや、そういう話してんじゃねぇだろ」

なにこのカップルみたいな会話。
寒い。

「最初からほっといてくれた方がましだよ」

しかも、一方的にだが抱き合っているようにも見えないこの状況。

なんだこれは。

「仕方ねぇだろ、ほっとけねぇんだから」

「え?」

いたたまれなさに身体を離すとと、ふいに目があった。

年齢のわりに細い身体、くせっけで少しカールした金の髪。

あぁ、やっぱり似ている。

「うー…!まぁちゃん!」

「う、わ!」

下を向き、震えているかと思えばまた飛びついてきた。
行動まで似てるな。

「大丈夫!」

「なにが」

「毎日まぁちゃんと一緒にいれば、困らないから!」

「そういう話じゃねぇだろ」

「へへ」

俺はこいつを甘やかし過ぎたかな、と我が家のアイドルの思い出しながら頭を撫でたのだった。







2013/09/02
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