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  『ずっと片思い』
© 和泉 奏 
作者のサイト 
 R指定:有り
 キーワード:同級生、社会人、悲哀、R18
 あらすじ:俺達は、ずっと友達で、同級生で、…男同士で、
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ずっと…好きだった。





「んぅ、ふっ……んぅんっ……!」


「……は…っ、イク…ッ」


「…ぁ…ッ!!は…っ、奥…っ、ビクってゆいとの…えきっ、……はぁ、っ熱……んぅ……」






ナカに放たれた白濁液を感じて熱い吐息を零しながら、初めての肛姦だったのにも関わらず太いペニスをずっぽりと咥えこむ自分の尻穴に緩い笑みを浮かべる。
初めてだから、とてつもなく痛い。


…痛いけど、でもその痛みなんか気にならない程、初恋の相手と繋がっている”今”に満足していた。涙が零れるくらい幸せだった。



「…ッ、は…っ」



「……あッ、あッ、んぁあ…っ!」




俺の穴に挿入している男も初めて見る表情で、余裕なさげに息を荒げている。
こうして繋がることを求めなければ、きっと一生目にすることなんてできなかった。



色っぽい声。熱を帯びた吐息。
程よく鍛えられた身体。



今俺が彼に興奮を与えているんだということがわかって嬉しくて堪らなくて、揺れて大きな音を鳴らすベッドにも構わずに尻を突き出しながら、もっともっと奥にいれてほしいと懇願するように腰を自ら振る。


コイツさえ傍にいてくれれば、他の全てを失ってもいいとさえ思った。
友達としてじゃなく、本気で…好きだった。愛してた。




「…ッ、おまえ…っ、えろすぎ…ッ」


「は…っ、なれてんだよ…っこういうの…ッ」


「…っ、…へぇ…ッ、そうか、よッ!」


「やぁ…っ!!あっんぅ、んっ…ふぅ……ふぅっ……!」




唯人の声に、ハッと鼻で笑って返す。
そんな自分の声音とは裏腹に、心臓は引き裂かれたようにずっと痛みを訴えている。



…嘘だった。


全部、初めてだった。
こうやって男に挿入されるのも、自分から誰かにセックスしようと誘いをもちかけたのも。



全部この男が、…唯人が初めてだった。



でも、初めてだなんて知られたらきっと相手は重いと感じる。
ショックを受ける。
もしかしたらこの行為さえ、やめようと言い出されてしまうかもしれない。



(…そんなの、絶対に嫌だ)



だから、わざと慣れているふりをした。
お前が初めてじゃないんだって嘘をついた。


そうでもしないと、今すぐにでも身体の奥から込み上げる感情に負けて泣いてしまいそうだった。




「……ッ、…おまえ、実は男もイケたんだ……っ?」


「…っ、は…っ、ぁ゛…ッ」



どことなく嘲りを含む声に、強く胸を突き刺されたような痛みが走る。
速度は緩くなったけど、わざと聞こえなかったふりをして返事は返さなかった。





「あっんぅ、んっ…ふぅ……ふぅっ、」




「…っ、あれだけいっしょにいたのに…ッ、知らなかったな…っ」




「っ…ふぁ…んッ!…ふっ……!」



ナカを荒らすように腰を激しく押し付けられて、唇の端から甘い声が漏れる。
内臓が押し上げられている。
肚の奥を、半ば強引に広げられて下半身は引きつっていた。
呼吸するたびに後孔を締め付けて、快感の混じった苦しそうな声を零させる。
まだ硬い孔をもっと唯人の形に拡げてほしくて、その熱の感触を焼き付けてほしくて、わざと下腹部に力を入れて後孔でモノを締め付けてやる。


…できることなら今この瞬間、このままで時間が永遠に止まってしまえばいいのに。






「…っ、締め、すぎ…ッ、ぁ…っ」


「はぁ……蕩ける……っ…やば…ッ、きもちい…っゆいと…ッ、ゆいと…っ」


「…は…っ、俺も、きもちい…ッあぁっ、まじで…っ……もう出そ……っ」


「いいよっ…ぁっ…!…おれも…っ、やばい…っ」





この行為自体が初めての癖に、自分からバックでの挿入を求めた。


腹の奥まで挿入され、ズンズンと突かれる衝撃に気が遠くなりそうだった。
激しく腰を打ち付けられるたび、唯人と俺の結合部はぴったり余るところなくぴったりとくっ付くその瞬間がたまらなく怖くて…愛しい。
味わったことのない感覚に身震いする。


シーツを握りしめながら、声を漏らす。


毎日の日課のように今日も当たり前のように俺の家に来た唯人に、感情が爆発して叫びたくなった。
出来ることなら感情のままに喚いて、自分の想いを伝えてしまいたかった。



…でも、そんなことできるはずもなくて。



”俺のこと、抱いてよ”



できるだけ平静を装って冗談っぽく笑いながらそう言えば、彼はいつも通り顔色一つ変えずに短く聞き返してきた。


”…本気?”


うん、と迷いもなく肯定する俺に対して、彼は真剣な眼差しのまま少し黙って静かに「わかった」と頷いた。




軽くあしらわれると思っていただけに、逆に動揺したのは俺の方だった。

そんな俺を見た彼は無表情のまま”やめる?”と問いかけてきて、少し緊張しながら俺は全力で首を横に振った。





…そして彼は今俺の部屋で、こうして俺を抱いてくれている。


もしかしたら、これが最後になるんだとと分かってるから、一度くらいやってみてもいいかもしれないと思ったのかもしれない。


…でも、それでも構わなかった。
彼と結ばれることができるなら、どんな理由でも構わなかった。


挿れないっていう選択肢もあったのに、…結局うまく解せずにいる俺の穴に指を突っ込んでローションで柔らかくしながらできるだけ痛くならないようにと気を遣ってくれた。


俺のために、俺に挿れるために、そこまでしてくれた。


きっと俺は、この日のことを一生忘れない。
…いや、忘れようとしても忘れることなんて出来ない。


だって、今俺達がセックスしてるのは俺の部屋で、…それに、唯人と過ごした思い出が沢山あるんだから。



…これからもずっとここで過ごすなら、嫌でも思い出してしまうに決まってる。



でもたとえ今こうしているのが違う場所だったとしても、俺自身、…この日を忘れることを望む時が来るとは思えなかった。







「はぁ…ッ!ぁあ゛…っゆいと…っ、」


「…っ、…ッ」





後ろから伸びてきた手に、ぐちゅぐちゅと前のペニスを扱かれて。

それが唯人の手だと、今…俺のペニスを触っているのが唯人の手だと感じて、その瞬間思考する間もなく一瞬でイッた。
背筋から駆け上るような快楽に抗えず肉体は大きく痙攣を起こす。
身体の奥の部分が熱くなって意識が混濁する。
性器の裏側を擦られるという快感と、今自分は好きな相手にそうさせられているのだという幸福感。
後孔がぎゅうぎゅうに締まる。
激しい突き上げに、また射精感が湧き上がってくる。





「や…っ、ゆいと…ッ、つぎ…っ、つぎは、いっしょ…!いっしょに…ッ」




また自分だけ先にイクなんて嫌だ。
涙を零しながらそう懇願すれば、その直後ビクンと一際大きくナカで唯人のペニスが激しく脈打った。




「ゆいと…っ、ゆ、」


「…ッ、でる…っ」




俺が射精した直後、唯人のペニスも熱を放った。
その熱で肚が満たされるのが嬉しくて、目頭が熱くなる。


これがセックスなんだと思った。
相手を受け入れるっていうことがどういうことか、初めて知った。






「…っ、は…ッ…ゆいと…すき…」


「…っ、…俺も…お前の事…好きだよ…」


「…ッ…」





まさか、思わず口から出た言葉にそんな返事が返ってくるなんて思ってなくて。

…幸せだ。幸せなんだ。きっと今この瞬間、俺は世界中の誰よりも幸せだった。





「…っ、ぅ…」




シーツに隠すように強く顔をくっつける。
嘘だってわかってる。
彼は、俺に合わせて嘘をついてくれた。


…”好き”だなんて、俺にとってこれ以上ないほど最上級の嘘を…ついてくれた。






「…っ、――ッ」





油断すれば口から零れそうになる音を、唇を痛いほど噛んで堪える。
肩が、身体が、小さく震える。
瞼の裏から零れる熱いモノのせいでシーツに染みが出来ていく。



今だけは、俺のものだ。

……今だけは、彼はおれだけのもの。



だから、頬を伝うものは喜び以外の気持ちから来る涙なんかじゃない。
…絶対に…それ以外の感情から来る涙なんかじゃない。




「…っ、…ッ」


「…………」




多分、彼も俺が泣いてるのに気づいてた。
でも、あえてそのことには触れずに後ろから俺の身体を抱く。



「…っ」



不意にビクッと小さく身体が震えた。
俺の手にそっと重ねられた彼の手。
お互いに汗ばんだ指を絡めるように優しく握ってくる。
一瞬驚いて、熱い涙を零す瞼を閉じてぎゅ、と少し強く返した。


繋がった手。絡めた指。
背中から伝わってくる彼の体温。鼓動。その存在全てが…愛しい。



それなのに。

今確実に彼と繋がっているのは俺のはずなのに。


(彼の恋人は、…俺じゃない)


それが何を意味しているか、なんてもう嫌というほど理解している。





「…――」



俺を抱きしめたまま、小さく名前を呼ぶ彼の声には応えず息を殺して泣く。


直接、こんな状況じゃなくて…面と向かってこの想いを言葉に出来たら良い。
そしたら、きっとちゃんと唯人のことを諦められる。
きっぱりと自分が振られたら、もしかしたら自分が振られたってことを自覚できて、次だ次だと気持ちを切り替えることができるかもしれない。



でも、こんな風に嘘でも好きだなんて言われたら…絶対にもう忘れることなんてできない。




今この場で、




「ずっと好きだった。だから傍にいてほしい」




そう言えたら…どれだけ楽だろう。





でも、そんなの言えるわけがない。
喉の奥で震える声帯が熱い。




(……言えるわけが、ないんだ…)





…――だって、彼は明日他の女の人と結婚する。





――――――――――




俺達は、ずっと友達で、同級生で、…男同士で、


「好き」だなんて感情、言葉にできるはずもなかった。









2016/06/25
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