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 遠回りのワケ
© ショコラ 
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 R指定:---
 キーワード:未練 思い出
 あらすじ:気がつけばいつも探している、アイツの姿。
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学校帰り、いつも通りの遠回り。


ポケットに両手を突っ込んで、イヤフォンから流れ込む音に耳を傾ける。


自分だって学生に違いないのに、大学前の喧騒から逃れたくて、俺は毎日この道を歩く。


嫌んなるほど、通い慣れた道。


顔を少し上げて、空に向かって短く息を吐く。

大型のバイクが、マフラーを吹かしながら傍を通り抜けて行った。

ついつい乗ってる奴を確認しちまう。


――アイツなわけ、ないのに。

無意識の自分に舌打ちをした後、また歩き始める。


公園を右手に見ながら、緩やかな坂をダラダラと上っていくと、年期の入ったマンションが見えてきた。

アイツが住んでる家。
2年間、アイツと一緒に暮らした家。


電気が点いてれば帰ってるとか、バイクがないからバイト行ってんだとか……。

ここを通るたび、そんな事をイヤでも考えてしまう俺は、どうかしてる。

恋する乙女やストーカーじゃあるまいし。

そんな事を思いつつも、結局アイツの部屋の辺りを見上げてしまう俺は、ホントどうかしてるらしい。


バルコニーで、見覚えのあるTシャツが風に吹かれているのが目に入る。

俺は思わず苦笑した。

ないないと思ってたら、アイツが持ってやがったのか。
ったく、人のお気にTシャツ借りパクしてんじゃねぇよ。


――テル、ちゃんと食ってるか。
俺は、まだお前を忘れられそうにないよ。



学校帰り、いつも通りの遠回り。

大学前の喧騒から逃れたくて、俺は毎日この道を歩く。
本当は、そんなのただの口実なのかもしれないけれど。

きっと、明日も俺はこの道を行くんだろう。







2007/03/01
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