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 『貴方の腕の中』
© Ri 
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 キーワード:キーワード:不良×猫被り優等生/屋上/微ヘタレ
 あらすじ:あらすじ:サイトWeb拍手御礼小説・一話完結型・現在連載中※サイトは15禁〜です。
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T『貴方の腕の中』






 見上げた空は、冷えて澄み渡ってむなしくなる程青い。
俺が吸う煙草の煙りが、雲の代わりみたいに昇っては消えていく。


開け放った学ランをめくる風がシャツ越しに冷たくて、思わず身構えてしまった。




「禄(ロク)、煙草」

屋上の柵に凭れ掛かっていた俺の後ろから、聞き馴染んだ声が背中にしみる。

何時間も外にいて冷えた体が、声を聞いた背中から暖まっていく感じがした。






――末期だ。たかが声だけで。








「無視すんじゃねーよ。煙草」

「…市威(イチイ)、口調悪過ぎ」

いつまで経っても返事をしない俺に、市威が痺れを切らして抱き着いてきた。
肩に顎を乗せ、俺が吸っていた煙草を無理矢理奪っていく。


男の癖に細くて綺麗な指が口に近付くのを、俺は目で追ってしまった。



「いいだろ?下ではいい子ちゃん演じてんだから」

俺の目線に気付いたのか、煙草をくわえた市威の唇が薄く笑う。
今更戻す必要もなく、俺はそのまま視線を上げた。


「なぁ。それとも、禄も優等生の俺が良いのか?」

高慢にさえ見える鳶色の瞳が、俺の顔を映している。


その瞳に、俺はマジで弱い。






いや、もう市威自体に弱過ぎる。





「…あれはあれで、鳥肌が立つからいい」

俺が無愛想にそう返すと、市威は何故か満足そうに笑った。

噛み締める様に笑いながら煙草を離して、煙りを細く横に吐き捨てる。


その仕草が妙に色っぽくて、直視出来ずに俺は視線を外した。




市威の体と密着した背中が熱い。
道を通っている人はみな寒そうに体を縮こませているのに、俺の体はだんだんと熱くなっていく。


目線を外した俺に、市威は腰に回した腕を外した。




「禄。愛してるよ」




その手で顔を引き戻され、唇を合わせられた。
市威の冷たい唇の感覚とは逆に、体の熱が一気に上がる。





言葉よりも、その触れるだけのキスに。







俺よりも背が低い癖にいつも態度はでかくて。
綺麗な顔して笑顔を振り撒いてる癖に、中身は荒みきってて。





でも俺は市威が好きで。

市威の腕の中が、ひどく暖かくて。






どうしようもなく、市威を抱きたくてしょうがなかった。
















「…あったけぇな。ちくしょう」







End
―――――――

最後まで読んで頂きありがとうございます。










2007/03/04
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