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 あの頃の僕ら
© コーラ 
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 あらすじ:幼馴染である二人の小学生時代のお話
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騒がしいクラス。
馬鹿な連中。
退屈な授業。
学校なんか、きたくない。

掛け算の九九を説明している先生を余所に、俺はボンヤリしながら窓の外を眺める。

運動場では、1組がサッカーをしていた。
何気なくその様子を観察していると、ある一人がゴールを決めた。
喜ぶ彼のチームメイト達。彼の周りに集まり、はしゃいでいる。

ゴールを決めたのは、"芳村涼"という名の男の子。
俺の家の隣の子だ。
お互い顔は知ってるし、名前も知ってる。
話した事もある。けれど、そこまで仲良くはなかった。
何度か「一緒に遊ぼう」と声をかけられた事はあるが、俺は断った。
だって、俺の知らない他の子もいるんだ。
その輪の中に飛び込む勇気は、俺にはなかった。

俺が誘いを断ると、涼は寂しそうな顔をした。

「じゃあ、また今度遊ぼうな」

そう言い残し、他の連中に急かされ俺の前から去っていく。
何となく、胸がチクリとした。



更に1年がたち、俺は小学3年生になった。

冷めた気持ちで、新しいクラス、新しい教室へと足を進める。
教室の前まで来ると、ガヤガヤと騒がしい音の中、俺は見知った笑い声を耳にした。
逸る気持ちで、教室のドアを開ける。


「あ!恭介〜」


―…やっぱり。
芳村涼だった。
一緒のクラスになったのか。

嬉しそうな表情で、俺のところへ駆け寄ってくる涼。

「一緒のクラスだな!よろしくっ」

ニコニコしながら手を差し出す涼に、俺は戸惑った。

何だか気恥ずかしくて、その手を握れないでいると、涼の隣に知らない子がやってきた。

「涼、誰だコイツ」

涼の肩に手を乗せ、ジロジロと俺を見てくる。
声をかけられ、涼は俺に差し出していた手を引っ込めた。

「卓也」

卓也と呼ばれた人物と、楽しそうに話す涼。
俺は疎外感を感じた。

「あ、恭介、こいつ卓也っていうの。2年の時一緒のクラスだったんだ」

ふーん…。
興味ないな。

「卓也、こいつ恭介。俺の家のお隣サンなんだよ」

涼が、俺の事を卓也に紹介する。
卓也は、涼にそう言われ俺をチラリと見ると、またすぐに涼に視線を戻した。

「へ〜。それより涼、直輝がザリガニ持ってきたんだよ。こんな暗そうな奴放っておいて直輝のとこ行こうぜ」

…暗そうな奴…ね。まぁ、確かに俺は暗いけど。

涼も、俺みたいなのといるより、向こうで騒いでいる方がいいだろうな…。
俺なんかといても、楽しくないだろうし。


涼の顔をそっと盗み見ると、少し怒っているようだった。
どうしたんだろうか。

「恭介は暗くないよ」

え?
予想外の涼の発言に、ドキリとした。

「なんだよ急に。そんな奴の肩持つのか?」

不満そうに言う卓也。
そりゃそうだ。涼は俺といるより、皆と遊んでいた方が似合う。

…自分でそう思い空しくなってきた…。


「そんな奴って言うなよ」

涼が、卓也に怒りをあらわにして言う。
卓也は、涼が俺をかばうので腹立たしい様子だ。

「つまんねーの。涼のバーカ!勝手にしろ!」

そう言って向こうへ行ってしまった卓也。
去り際に俺を鋭く睨んでいった。



「いいの?」

俺が遠慮がちに涼に声をかけると、涼は、何が?という表情。

「涼君は、向こうで皆と遊びたいんじゃないの?」

「いやーだってさー。あいつの言い方がむかつくじゃん。あ、あと俺の事呼び捨てでいいよ」

眩しい笑顔。
涼には、向日葵の花がよく似合いそうだなぁ…なんて思った。

「わかった、涼。ありがとう」

そう言った俺に、涼は柔らかく微笑んでくれた。

かわいい…。


訳もわからず、顔が熱くなった。









2007/03/05
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