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春
R指定:無し
キーワード:遠恋 関西弁 新生活
あらすじ:「離れとった分の距離も時間も、これから二人で埋めていったらええ。」保は、駅へと恋人を迎えに行く。
▼一番下へ飛ぶ
――ずっと待っとった日。
心待ちにしとった日。
やっと、その日が来た。
おろしたてのジャケットを羽織り、保は足早に駅へと向かう。
雨上がりの生暖かい風が、頬を掠めていく。
ほころび始めていた桜の花びらも、雨にうたれて散ったのか、道には薄紅色の絨毯が敷かれていた。
通り沿いに立ち並んでいるセレクトショップが見えてくると、保はゆっくりと足を止めた。
ショウウィンドウに映る自分の姿を、心配そうに何度も見やる。
髪型は、おかしないやろか?
やっぱ、あのシャツのが良かったんちゃうかな?
何で、オレ今日に限って奥二重やねやろ。
朝早くから、何度も何度もチェックしたはずの自分の姿が、不格好に見えて仕方がない。
小さく舌打ちをすると、保は時計へと視線を落とし、再び足早に歩き出した。
駅に着くと、馴れた様子で財布からカードを取り出し、改札を抜ける。
ホームに滑り込んで来た列車に飛び乗ると、1番端の席に腰を下ろした。
平日とあってか、車内はわりと空いていて、耳を塞ぎたくなるような騒がしさはない。
柔らかな日差しが差し込む車内で、保は軽く目を閉じた。
新大阪まで、電車で24分。
途中、乗り換えが一回。
電車の揺れに身を委ねながら、待ち侘びた一瞬を夢見る。
ホームで待つオレの姿を見つけたら、きっとアイツは息切らして駆け寄ってくる。
そしたら、余裕の笑み浮かべて言うてやるんや。
「そないに、俺に会いたかったん?」
今まで、散々寂しい想いさしてきた罰やで。
――ああ、早くアイツの顔が見とぉてたまらん。
保は、ポケットの中の鍵をそっと握りしめた。
今日から、二人の新しい生活が始まる。
****
END.
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2007/03/11
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