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 春
© ショコラ 
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 R指定:無し
 キーワード:遠恋 関西弁 新生活
 あらすじ:「離れとった分の距離も時間も、これから二人で埋めていったらええ。」保は、駅へと恋人を迎えに行く。
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――ずっと待っとった日。
心待ちにしとった日。

やっと、その日が来た。



おろしたてのジャケットを羽織り、保は足早に駅へと向かう。

雨上がりの生暖かい風が、頬を掠めていく。
ほころび始めていた桜の花びらも、雨にうたれて散ったのか、道には薄紅色の絨毯が敷かれていた。

通り沿いに立ち並んでいるセレクトショップが見えてくると、保はゆっくりと足を止めた。
ショウウィンドウに映る自分の姿を、心配そうに何度も見やる。


髪型は、おかしないやろか?
やっぱ、あのシャツのが良かったんちゃうかな?
何で、オレ今日に限って奥二重やねやろ。

朝早くから、何度も何度もチェックしたはずの自分の姿が、不格好に見えて仕方がない。
小さく舌打ちをすると、保は時計へと視線を落とし、再び足早に歩き出した。


駅に着くと、馴れた様子で財布からカードを取り出し、改札を抜ける。
ホームに滑り込んで来た列車に飛び乗ると、1番端の席に腰を下ろした。

平日とあってか、車内はわりと空いていて、耳を塞ぎたくなるような騒がしさはない。

柔らかな日差しが差し込む車内で、保は軽く目を閉じた。


新大阪まで、電車で24分。
途中、乗り換えが一回。


電車の揺れに身を委ねながら、待ち侘びた一瞬を夢見る。


ホームで待つオレの姿を見つけたら、きっとアイツは息切らして駆け寄ってくる。
そしたら、余裕の笑み浮かべて言うてやるんや。

「そないに、俺に会いたかったん?」

今まで、散々寂しい想いさしてきた罰やで。


――ああ、早くアイツの顔が見とぉてたまらん。

保は、ポケットの中の鍵をそっと握りしめた。

今日から、二人の新しい生活が始まる。



****
END.
****







2007/03/11
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