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目玉焼き
小説ページ

【作者】
ヤマサン
書き出し100文字orあらすじ紹介

私が目玉焼きに砂糖をかけると言った時、君は一瞬気持ちの悪い物を見たかのように顔を歪ませたが、すぐに「貴方らしいや」と笑った。黄身のように明るい、私の好きな彼の表情だ。なので彼と暮らしはじめて、毎朝テーブルの上には必ず醤油と砂糖の小瓶の二つが置かれるようになった。

小説のジャンル:短篇/読み切り

作者のお気に入り紹介/読書遍歴

塩の街

作者から読者さんへメッセージ

私が目玉焼きに砂糖をかけると言った時、君は一瞬気持ちの悪い物を見たかのように顔を歪ませたが、すぐに「貴方らしいや」と笑った。黄身のように明るい、私の好きな彼の表情だ。なので彼と暮らしはじめて、毎朝テーブルの上には必ず醤油と砂糖の小瓶の二つが置かれるようになった。


以前一度だけ、彼が砂糖の入った容器の中身を塩に変え、さも何事もないかのようにいつも通りテーブルに置いた事があった。私は疑いもせずに彼の作ってくれた目玉焼きに自分が砂糖と思い込んだ塩を大量に振りかけて、黄身を崩して白身ごと口の中に入れた。頬ばった瞬間、彼がにやりといたずらが成功したこどものようににやにやと珍しい表情をし、私は何だ?と疑問に思ったが、口の中に広がる塩辛い味に、直ぐに私が彼のいたずらに引っかかった事が分かった。


しかし私を侮るなかれ、私はとっさに眉をひそめ、口元を手でおおい激しく咳き込む振りをした。言葉は出さす、表情でさも苦しげだと訴えかける演技をした。少し大袈裟にやりすぎたかなと彼の方をちらりと見れば、先ほどのいたずらっ子な可愛いらしい笑みは消え去り、可哀想な程に顔を青くし、硬直している彼がいた。


しまった、やりすぎた。私は慌てて彼のそばに行き自分の身の安否と大人気ない真似をしてしまったことを謝罪した。私の言葉を聞いた彼は、しばらく放心していたが、私がなんとも無いと分かると目に涙をためて今にも泣き出しそうな顔をしながら無理矢理笑みを作り「貴方には俳優の才能があるのかもね」と言ってきた。何を言ってるんだと自分も笑おうかと思ったが、少しだけひきつったまま上がっている彼の口角に目がいき、私はもう一度「ごめんね」と口にした。椅子に座っている彼を少しかがんで抱き締めれば、いつも恥ずかしいからとすぐに逃げる腕が素直に首もとに絡んできて思わず苦笑いしてしまう。


まだ少し震えている彼の頭を優しく撫でれば、癖っ毛の彼の髪が自分のごつごつとした手に絡んできて、なんだか愛しく思えた。


「いたずらしてごめんなさい」

「お互い様だよ」


自分の肩に顔を埋めた彼から聞こえたくぐもった声。彼の頭越しに食べかけの目玉焼きを見つめて、たまには砂糖意外もいいかもなと少し下世話な事を想像してみる。それを悟ったのか、顔を上げて少し赤くした目をした彼が「やっぱり貴方はそうゆう人ですね」と笑ったのだった。



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投稿日:2015年11月02日
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