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月刊 未詳24

2010年11月第44号


2024年05月02日(木)06:59


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ひとつ 水日
 木立 悟







鳥が月をついばみ持ち去り
別の月をどこかに作る
午後の舌を
午後にまみれた氷が過ぎる


ただひとつの音の他は
すべて重なり響く雨の日
ただひとつは道の灯に立ち
ひとつのふるえを聴きつづけている


水と景と水と景
はざまに入り込めないもの
雪と雪を招くもの
一途な痛みであろうとするもの


雨にかかとを押しつけて
罪より高く跳ぼうとしている
ひとつの音を
得ようとしている


半分が緑の午後の空から
無い音ばかりが降りつづく
石と道 響きのほうへ曲がる道
終わらない異議たち 標たち


まともさや
豊かさに長けた火を過ぎて
ざくざくと
水は狭い暗がりをゆく


指のすきま 陸のすきま
ただ傍らの時と雨
無いまたたきの
在りつづける日


水壁 油彩 水壁 油彩
何も見えない午後のまま
巡りは巡り
水際を水際にふちどってゆく



























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一輪の眩暈
 腰越広茂

一輪の白い花を手折る時にもらした溜息は
蒼空へ昇った
ふしめがちなほほえみは
みすごされてしまった

光に透ける花びらを
みつめるひとみは澄んでいて
か細くなった息をする
私を映している
一瞬を
影は暗黒にとどまり
魂の額縁に納められて

ほっそりとした中性の曲線を帯びた
一輪挿しにいけられて
私は葉脈を伝う終止符を
ゆるやかにすい上げる
光薫るほほえみをかすかにかしげて

宙に立ち暗み。手をかざす
原野に風の吹きわたり
あどけなく
むしりとった暗雲をほおばる
あのこの涙の味がする

球根は生きていた
つぎの命日の
季節にも
花を咲かせ

みえない球根の遠心力へ
ほほえみかける
写真は
ゆらぎ
さしのべて



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記憶の壷
 ホロウ



許されない歌と
悲しまない声の祭り
阻まれない夢と
ひび割れた道の終わり
長い歩みが終わりを告げる
その時の寂しさのような気持ちで
あなたはほんの少しの
木の実を口に含むのです


生まれてからこれまで
呼吸のように繰り返してきた思い
わき水にふれ
冷たさに震える感じみたいな気づき
愛玩用の鼠が小さな車の中で走りつづけて
そのあとはっとなにかに気を取られたときの目つき
カレンダーの空欄では
すべてのルートを記すことは出来ない
確かな朝靄みたいに
昨日は断片をさらして
ピノキオが迎える明日と
同列だけど有限な朝の数
それ以上語らないで
それ以上綴らないで
恐怖にも似た断片を
陽だまりのぬくもりなんかに似せたような調子で


わたしの心は
わたしの肉の中などにはなく
反動に任せて水を飲む木彫りの鳥みたいに
身体は運動を繰り返して
果てる
心をそこに残していてはいけない
翡翠の中の蜂みたいに凝固してしまうから


夢に出てきた懐かしい人たち
昔過ぎて愛してると言えない
このあたりの風は海から吹いてくるので
わたしの感情は古いものから順番に錆びていってしまう
冬になるのに
暖かそうな真似なんか出来ないし


秋を引き留めようとするみたいに
赤蜻蛉の羽を追いかけていた幼い日
ゆうやけこやけがわたしに教えてくれたこと
歳を取るごとに少しずつ
寒さは形を変えるのだと
わたしは蜻蛉を捕まえるのが下手だった
何度も網を破いては
うつむいて帰った土塊の道


夜が遅いからもう寝なくてはいけません
時が過ぎるから馴れなくてはなりません
寝たり起きたり繰り返して
いつかわたしも失われる記憶の一部になる
新しい枕とシーツを
まだ終わらないものがあることを
その清らかさでわたしに囁いてください
優しさなどは散りばめないでください
そこに夢を見られるほどに
なにも知らないわけではないのです




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食卓の岸辺
 腰越広茂

しじみはしゃべらないけれど、
しじみ同志にしかわからない事があるのかも
しれない。しじみにはしじみのことばがあっ
て、いまも会話をしているのかもしれない。

海の風に立ち
素肌は陽に透けている
砂浜の真砂をにぎった
砂時計は空に反射し
水平線をみつめ湾曲しんわりだ
だれひとりいない岸辺に
かもめがないている
まるい食卓で
あおむくわたし
めぐることのない道のりの終着点
きこえて来るのは暗ぁいさざなみ
さようならかもめさん
出会えましたね
と手をふりふり
あちらへみえるのは不二山。?

しじみに黙礼をする
しじみは黙礼をする
蝶番が声も無く
飛び去る
海原のしじまへ

うしなったいのちは二度と帰らない
この手にのこる喪失と
螺旋の記憶にそう
空耳の骨芽細胞のきしむ光合成

ある縁側からみえる黒雨のしずけさ
遠雷のゆくえ
風はなぎ
いつまでも、訪れないだろうか
本日の夕餉は
ひとわんのしじみじるをいただく



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祈り
 黒木みーあ



小さくひとつ、嗚咽をもらす
まだ
言葉にもならない 声の波
 
片方ばかりを向いて
片方ばかりを片手で引っ掻いて
不器用に 力の入るちいさな手を
手織りのミトンで すっぽり包んで
 
 
規則的な音をあげる
石油ストーブの 心音
微かに ふるえて
 
通りを行き交う
車の轍が尾を引きながら
遠く 響いている
 
  
薄い窓の隙間から
風は幾度となく
ひゅると 滑り込んでは
レースをゆらして
 
壁掛けの時計から
知らずしらず
生まれていく
夜のリズム

  
穏やかすぎれば
不安になって
あたりまえであるはずのことさえ
確かめてしまうほどに
不確かで
  
少しだけ ふくらむ胸と
からだを丸めて
ふくらんだ、頬
 

豆電球の橙に
沈み込んで行く輪郭に
とんとんと いま
夢路を思う
叩いた数だけ 深まりながら
 
目を閉じては
目を開けて
ぼんやりとひろがり
脱力しては伸びていく
 
夜に いつまでも
眠りは浅く、
 
 



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