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 傷口に蜂蜜
© 山田小梅 
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 R指定:有り
 キーワード:18禁 俺様 シリーズ
 あらすじ:三年前、俺が恋い焦がれた男。三年前、俺を笑い者にした男。
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「俺を、ここに置いてくれ!」
「…へっ?」

置いてくれ!
っていうのは…、住まわせろって事?
ちょっと待って、脳みそが追い付かない。

「…っと、それは…、ここに住みたいって…?」
「そう。頼む!五月が俺を許してくれるまで、それかその足が治るまで、ここに置いてくれ!」
「え…、えっ!?」
「迷惑だって、自己中だって分かってる…。でも、どうしても俺っ、お前に言いたい事が…っ!」
泣きそうな顔をして、笹原は俺の手首を握ったまま離さないで、じっと見つめている。

「…っふ、ふざけてるだろ…。」
そうとしか思えない。
俺は何度お前に、泣かされればいいの?

「ふざけてなんか!頼む!!五月!お願い!」
お願い!って子供じゃないんだから。
絶対にからかってる。
俺をからかって、笑ってやがるんだ。
「いや、無理だか」
「という事で今日からお世話になります!!」
「チース!荷物、こちらに置いておきますね!あっ、笹原さん、判子頂けますか?」
「っは!?」
笹原のその一言で、明らかに引越業者のような者達が、勝手に玄関を開けて大きな段ボール箱を二つ、家主に断りもなく置いた。

「どもッス、はい、判子。ご苦労さんっした!」
「ご利用、有難うございましたー!」


「………へ……?」
「不束者ですが、どうぞ宜しく、五月。」

両手をポケットに入れたまま俺に頭を下げた笹原は、明らかに先ほどとは態度が違う。
その余裕の表情は何だ。

「…お前…、頭ん中カビてるだろ…。」
「カビは悪いものだけじゃないぜ?」

考えようとしたけど、理由はすぐに分かった。
こいつは、引越業者さんが俺の部屋に荷物を置くために時間を稼いだんだ。

荷物が届いたとなれば、こっちのもの。
さっきの余裕の表情は、そう言っていたのだ。

なんて奴だ!!

「ふっ〜ざけんなっ!!!」
「もう遅いもーん。」
「もんじゃない!!早くこの荷物持って出ていけよ!」
笹原の態度は豹変し、まるで自宅かのように我が物顔で冷蔵庫を開けている。
「俺、家追い出されちゃったんだ。…あ、お茶飲む?」
「おれんちのお茶だろ!…じ、じゃなくて!何考えてんだよお前、早く出ていけって!」

憤慨している俺を、笹原はもろともせずに、強い力でベッドに組み敷いた。
「なっ!?」
「五月、暫くの間だけでいいんだ。…お願い。」
「意味分かってんの!?おれ、お前と関わると辛いの!思い出すんだよ!!」

やばい、また泣きそう。
だめだ、こんなの奴の思うつぼだ。

「だから今すぐ出て…っん!」
「五月、俺、お前が好きで、東京来たんだ。五月、好きだ。許してもらえるなんてもう思わねーから、俺のこと笑っていいよ。」

突然の口付けと、突然の告白。
漫画とかでよく言うけどさ、きっと今の俺、目が点だ。

「俺のこと笑っていいよ。気持ち悪いだろ?」
「ちょっ、ちょちょちょちょ待って!!」
「ん?」
「…誰が誰を好きだって?」
「俺が、五月を。尚介君は五月君が好きなんだってさ。」
「ふざけんなよ!!冗談にも程がある…っ!」
「冗談じゃないよ、五月。東京なんて知らない土地で、大学を辞めてもお前が神奈川に帰ってこないから…、働きながら探してたんだ。」
「はぁ!?で、でも何で探す必要があったんだよ!?」
「好きだから。」


今日は寺さんが用事でこれなくて、ご飯は届けてくれたのを食べるってメールしてて…、うん、大丈夫整理できてるよ、俺、大丈夫。

そんで、笹原が来て、キッパリもう来るなって言おうとしたら、引っ越し屋さんが荷物で好きだから?

あれ?
俺まで脳みそカビたのかもしれない。

笹原の顔を見ても、ただ俺の顔を面白そうに見つめている。
こいつは、どこまで俺を玩具にすれば気が済むんだ?

呆れてものも言えない、って本当にあるんだね。
こいつに何から話したらいいか、全く分からなくなってしまった。

…とりあえず。


「とりあえず…、退いてくんないかな。」


>> 本編に続く <<









2010/08/31
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