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エイプリルにフール
by 高橋初真  
R指定:無し
キーワード:庭球王子(手塚×不二)
あらすじ:四月一日の塚←不二。
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「おはよう、手塚。今日も早いね」

殊更にこやかに、不二は言った。言外に(部長が朝一番に来るのも考え物だよ)と後輩達の為に付け足してみたものの、当の手塚は気付く気配すらない。

まあ、いいや。

それが手塚だと、不二は無愛想に挨拶を返してくるチームメイトの隣に立った。
新学年に進むので恒例のロッカー換えが先日行われたのだが、不二のロッカーは何故か手塚の隣になった。

嫌な訳ではない。

自分によく抱き付いてくる英二の賑やかさが、物静かな手塚の機嫌を逆撫でさえしなければ、どうという事はないのだ。

実際、鬼部長の逆鱗に触れた所で罰を与えられるのは英二だけなので、やはり不二に影響はない。

手塚の隣は居心地が良くも悪くもなかった。

……違うな。

と、不二は己の感想を否定した。

手塚の隣は居心地が良くも悪くもあるのだ。

まったく逆の発想の様で、結局、同じ答えになっている。しかし、不二には後者の方がしっくりくる。

シャツを脱ぎつつ、不二は、ふ、と思い出した。

「今日って四月一日だよね?」

念の為、横目で問う。

「そうだな」

手塚の答えは簡潔だ。いっそ清々しい程に、一言で済まされる。

誤解を招きやすい手塚の返答を、不二は割合早い段階で飲み込んだ。

彼はこういう物言いの人間なのだ。

未だに英二は慣れないらしいが。

「じゃあ、エイプリルフールだ」

「そうなるな」

不二の微笑みに、手塚は小さく溜め息を吐いた。

お前もくだらない嘘をつくのかと言わんばかりの態度だ。

手塚の言外に滲み出された呟きを、不二は正確に捕らえる事が出来る。

造作もない事だ。

だって僕は手塚じゃないからね。

不二は青学レギュラーのテニスウェアを手に取り、眼鏡の仏頂面を見上げた。

不二の視線には気付いたらしい、手塚が(なんだ)と無言で見詰め返してくる。

だから、不二はにこりと笑った。

「愛してるよ、手塚」

途端、仏頂面の眉間に皺が刻まれる。

不二はそれを放って、さっさと着替えを終わらせた。

ちゃんとラケットを忘れずに、部室を後にする。

一人残された手塚が今どういう表情をしているのか。

不二は想像してみる。

意識して、都合のいい方の夢をみる。

エイプリルフールくらい、正直でいたいもんね。

四月一日。

早朝のテニスコート。

不二は己の天の邪鬼な性格に、苦笑した。

end.


2009/06/21
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