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エイプリルにフール
by 高橋初真
R指定:無し
キーワード:庭球王子(手塚×不二)
あらすじ:四月一日の塚←不二。
▼一番下へ飛ぶ
「おはよう、手塚。今日も早いね」
殊更にこやかに、不二は言った。言外に(部長が朝一番に来るのも考え物だよ)と後輩達の為に付け足してみたものの、当の手塚は気付く気配すらない。
まあ、いいや。
それが手塚だと、不二は無愛想に挨拶を返してくるチームメイトの隣に立った。
新学年に進むので恒例のロッカー換えが先日行われたのだが、不二のロッカーは何故か手塚の隣になった。
嫌な訳ではない。
自分によく抱き付いてくる英二の賑やかさが、物静かな手塚の機嫌を逆撫でさえしなければ、どうという事はないのだ。
実際、鬼部長の逆鱗に触れた所で罰を与えられるのは英二だけなので、やはり不二に影響はない。
手塚の隣は居心地が良くも悪くもなかった。
……違うな。
と、不二は己の感想を否定した。
手塚の隣は居心地が良くも悪くもあるのだ。
まったく逆の発想の様で、結局、同じ答えになっている。しかし、不二には後者の方がしっくりくる。
シャツを脱ぎつつ、不二は、ふ、と思い出した。
「今日って四月一日だよね?」
念の為、横目で問う。
「そうだな」
手塚の答えは簡潔だ。いっそ清々しい程に、一言で済まされる。
誤解を招きやすい手塚の返答を、不二は割合早い段階で飲み込んだ。
彼はこういう物言いの人間なのだ。
未だに英二は慣れないらしいが。
「じゃあ、エイプリルフールだ」
「そうなるな」
不二の微笑みに、手塚は小さく溜め息を吐いた。
お前もくだらない嘘をつくのかと言わんばかりの態度だ。
手塚の言外に滲み出された呟きを、不二は正確に捕らえる事が出来る。
造作もない事だ。
だって僕は手塚じゃないからね。
不二は青学レギュラーのテニスウェアを手に取り、眼鏡の仏頂面を見上げた。
不二の視線には気付いたらしい、手塚が(なんだ)と無言で見詰め返してくる。
だから、不二はにこりと笑った。
「愛してるよ、手塚」
途端、仏頂面の眉間に皺が刻まれる。
不二はそれを放って、さっさと着替えを終わらせた。
ちゃんとラケットを忘れずに、部室を後にする。
一人残された手塚が今どういう表情をしているのか。
不二は想像してみる。
意識して、都合のいい方の夢をみる。
エイプリルフールくらい、正直でいたいもんね。
四月一日。
早朝のテニスコート。
不二は己の天の邪鬼な性格に、苦笑した。
end.
2009/06/21
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