第1回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦


審査員選評



平川綾真智

応募作品
#127 「臆する」 殿岡秀秋
応募作品
#133 「舵取りの神」 殿岡秀秋
作者は構成の妙を知り尽くしています。どちらの作品も分かりやすい比喩からの情感が秀逸でした。
時折、派生があり過ぎて軸の昇華が乱れることがありますが、これからも細胞から詩にするしかない作品を書き続けて欲しいです。
いつまでも読みたい作者です。

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平川綾真智

応募作品
#123 「君は害虫」 しもつき、七
上手いです。実に。上手い作品です。
作者が少し背伸びしている言葉が良い方向へと働き、ともすれば詩として平凡になりがちな内容を視点の見せ方で、非凡なそれでいて可愛らしい体温のある作品の方へ転じさせていっています。
完全なる読み手に均せて作品の中へ没入させる、それでいて完璧ではないので入り込みやすく人間的な内部を知ることが出来、照らされていく。
それを実践しているような稀有な作者だと感じました。
 咬合できないね
 わたしたち
 色欲だって燃やされちゃうんだ
 もうきたならしく火のなかだ

 害虫ならば潰せるよ
 舌ざわりのよくない欲情みたいに
 かなしいものではないじゃん

 わたしたち
 死につづけなければ
 ここで轢死/するんだ

 夕方は水のようにながれる群青をつかまえて、
 そろそろ咬み合いましょうかと
 つたえる唇もなく
このつながりは特別に見事です。咬合を分け切断し、火中に水を通していくことで広がります。
少しだけ気になったのは、そう思うと、
 君は害虫
のありきたりさと、
 わたしの思惑や、みぎ手、怒りであったものが
 もうあとかたもなく模倣されて
 暗転してゆく
はもう一歩工夫できるようにも感じました。けれどもその隙が良質でもあるので、あまりかっちり創造しないで欲しいな、とも感じています。
刺激を受けました。
心の底から発声します。ありがとうございます。

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平川綾真智

応募作品
#125 「魔睡」高柳 一之
一連、二連、三連の素晴らしさが魔睡という題材への取り組みを見事に昇華させたように感じます。
十二連まであるのですが、四連目から少しだけ失速していったことが気になりました。
 詩魔の作り出す眠りの中でしか
という全てが解り過ぎてしまう一文と、
 ああ、何と言うここちよさ
 何と言うしあわせ
は、書かなくても書かれているように感じたので、
最終連の三点リーダー
 …
も含めて、詰めすぎてしまった印象があるので、そこをなくしたらもっと良質な作品になったように感じました。
 僕が横たわる小舟を
 僕が浮かべている
 僕の上に僕がいて
 僕の下に僕がいる
この連は面白いですね。
この連から単独で作品を作って欲しいくらいに魅力を感じました。
素敵な部位が輝いていました。
前半部分の素晴らしさがこれから光っていく作品群を予感させました。


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平川綾真智

応募作品
#121 「花火」藤咲まつみ
リアリティが妙に印象的でした。
何も新しいことをしていないのに印象に残るだけの綴りを生み出していける作者へ惜しむことなく拍手したいです。
一連の孤独を見せられずに背伸びしている寂しさが、
 ぎゅっと妹の手を握りしめたことを
という一文によって見事に表わしてあり、花火の風景の中その色彩が音が感触が大切ではなかったことへの対象が、
読み手を掴むのだ、と思います。
二連も素晴らしいですね。
 しょっぱくなったかき氷を
 ひたすらお腹の中へ流しこみました
ここには妹すらもいない。寂しさを見せられない自身はもっと多くの視点へさらけ出されています。そのことからの自分の小ささが共感以上の感情を塗りつけてきます。
ひょっとしたら、
三連、四連は、
その素晴らしさを活かせていないのかもしれません。
 なんだか、昔の自分を思い出して
 少し切なくなりました
ここを、切ないということを手を握ったりかき氷を流したりという行為で表わしてきているので、三連目も何か行為で表わしても良かったのかもしれません。
四連目も感情の列挙に甘んじるのは勿体無いのかもしれません。

かなり気になる作者でした。
これからも詩人として詩を書いてしまうと思うので、これからもよろしくお願いします。

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平川綾真智

応募作品
117 「Taboo」野杉カヲル
孤独感が印象的な作品でした。
 僕はこの世界から外れた人間のよう。
 一人だけ違う。
 どうして、どうして。
 僕はこんなことを望んで生まれてきたの?

 ボーダーラインはどこですか?
 もう一度、教えて下さい。
 そうしたら、僕はその最前線で君を想うから。
新しい題材ではないのですが、真っ向から挑みきちんと描ききったことは素敵なことだと思います。
せっかくなので、自身の視点をもっと強調しても良いのかもしれません。
 足並みをそろえた彼らが、圧倒的多数の意思のもとで、分かれ目の線を引く。
ここをもっともっと強調して他の誰にも真似できないような言葉で綴っていっても良いのかもしれません。
孤独が素材にあるので誰もが共有できる綺麗な言葉で書かなくても面白い効果が出たかもしれないな、とも思いました。
寄り添いたくなる内実がありました。
独自の筆を身に付けていって、これからの作品でも共感を抱かせて欲しいです。


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平川綾真智

応募作品
114 『RUN』(ふう)
自分を車に喩えて懸命さを爽やかに描いた良質な作品でした。
誤字などもありますが、詩の大切なものを思いださせる不思議な魅力に富んでいると思います。
 星の道路はでこぼこするぞ
 惑星はぼくを見守っている
 太陽のトンネルはぼくを溶かすぞ
は、特に印象的です。
溶けてしまうとは。
若い方なんだと思います。
この感受性を忘れずに、いつまでも詩と付き合っていって欲しいです。



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平川綾真智

応募作品
110 「がいすと」ぎぃ
内側にしっかり目を向けた作品だと思います。
 もう何もボクには残ってない

 最後に残るのは
 愛でもなく影でもなく夢でもなく音でもなく砂でもなく闇でもなく零でもなく
少しだけ無難な言葉で綴り過ぎのようにも感じたので、もっと作者にしか書けない言葉で綴っていっても良いのかな、とも思いました。
主題にはとても共感しました。

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平川綾真智

応募作品
#108 「incen=ティブ」 ぎぃ
発想が面白い作品だと思いました。
空が見下していることを何故許せるのか、そこへの客観的な視点が魅力として埋め込まれていると思います。
発想や内容は面白いと思うので、それを受け渡す時に、選択している言葉や綴りをもっと高めていくともっと質の高いものとなるのかもしれません。
 いつだって
 上から視られるのを
 拒み続けたボクらなのに

 アオ
など、吸引力を付けられたら、拙さから倒されることはなくなると思うので、もっと面白い発想をどうやったら高めていけるか、そこを突き詰めていっても良いのかもしれません。
是非。

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平川綾真智

応募作品
#106 「にくしみのあと」 アウリステラ
感情の強烈さとひらがなのやわらかさで不思議な印象を受ける作品でした。
 あなたのなさけようしゃないうつくしいひとみ
 あなたのなさけようしゃないうつくしいひとみ
最後の印象で少し食い足りないようにも感じましたが、このコントラストは面白く働く可能を秘めていると思います。
 どうみゃく
が出た後にもっと期待してしまったので、前半の緩やかさをもっときたなくたたきつけて、対照をより密にしても面白かったかもしれません。
まとまりには頷かさせられました。

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平川綾真智

「挽回の宴」 アウリステラ
楽しい配列が寄ってきそうな作品です。
 さぁ、挽回の宴だ
 薔薇の傷口 目指して
ときて、拡げていきそうな裾があるのですが、
 とってもたのしい晩餐会
 ヘビさんもカエルさんも
 アライグマさんだっていらっしゃるのよ
と解体すると面白いけれどつながるとテンションの高さだけが目立ちがちになるという部分があるように思えたので、もっと一筋だけの連鎖をかけてまとまりのない方向へといっても良かったのかもしれません。
負の心理からの展開を明るくもっていく部分は面白いと思います。

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