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[1] 夏のひかり。
By 紅魚
01-10 00:21

ゆわゆわと撫でるみたいな植物性の文字列で、
あなたは、
あたしのかたちをすこしずつ分けて、
それから、
ひどく無秩序に、
しろい敷布のうえに並べて水を注ぐ、
よなやりかたで、
べつの形にかえていってしまいました、から、
あたし、
すこしだけこわかった、でした。
夏夜。
(はいに、すいれんがさく、かと、おもったの)

手繰りよせる蔓性の夜想のゆき先は、
いつだって、でたらめに入り組んでいて、
戯れに重ねる爪先の月、の、ぼわり、泣き虫。
摘んで捨ててしまわなくては。
(ふねにするには、たよりないもの)

あ、

 あ。

燃えるダリヤの原色に追われる心地の夏が、また廻りましたのに、あたしときたら、枕木の隙間、線路伝うたたんに急かされて、痩せた花揺らす待宵草の、しぼんだ薄紅より、まだ頼りない。触れるみどりの指先すら上手に染められなくて、うなだれて、いる。
(あたし、よるには、さけないの)

青、が黒に見えるまで塗りたくった空のべたべたに、
飛び込んだなら泳げるんだろうか、
留紅草の羽衣、で。
赤の星。
白の星。
猫ノ耳商會謹製。

おしゃべりが過ぎた金魚草は、
あぶくを吐けずに、
夏の水の底、溺れてしまいました。
柘榴が隠す鉱物性の秘密は、
まだ、覗いてはいけませんから、
菊花にも桔梗にも、
少し、早すぎますね。

全部がお話になってしまうまで、に、
どれだけの花の名を、
あなたに伝えられるの。
先を、先を、と、
目を細めたなら、
決して実をつけることない、
常緑の、双葉。
(すこしかなしくも、あるけれど)

蝉の声にじっとりと含まれた水気が空気をぐらぐらと煮立たせて、
すべての音を、ぼおやり遠くにやってしまうから、
あたし、
両耳をあなたの掌で塞がれる、
の想像が連れてくる酷く現実味を帯びた感覚に、
ひっそりと暦の十二枚を思ったり、するのです。


820SH
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