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ニンゲンはスケベ
 宮下倉庫

ニンゲンはスケベ
だから
そのロング缶に
名前をつけろ
なんて冗談じゃない
ビールくさいしょうべんが
月のめぐりを待ちきれず
排出されてしまうから
それはまったく
冗談じゃない
ちんこに
手を添えて呆然としていれば
少なくとも
死んではいないらしい
ロングボードを抱えた見知らぬ
女が声をかけてくる
ね 妊娠って大変なのよ
よかったら代わってくれない?
おれのはちぢみあがって
名前をきくのが精一杯だ
あたし?
あたし ロング缶っていうの
よくうっかり排出されちゃうのよ
名前のせいかしら

おしっこは奔流みたいに
1秒か2秒くらいなら上に
立っていられるくらい濃いじょ
ぼじょぼをはっせいさせ
ながらおれのしょうべんくさいをう
っかり排出し
ている
迷いなくレバーをひねる
途端に潮が満ち
怒涛がわきおこる
こんなのを 待ってたの
そう言い残してロング缶は
パドリングで掻き分けていく
ビールくさい引き波が
ふたりかさんにんぶんの一生を洗う
あなたのおとうさんはね
いっつもちんこに手を添えて
呆然としているような人だったのよ
あたし 生まれてくる子供に
そう言ってやるの
だから
その ロング缶に名前
つけてよ


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「かふぇてらす空路(そらじ)」
 腰越広茂


私には保証書がない
雨は灰を帰すから
空が大地が、きらめいている
くやしい
鮮やかすぎる日中

それでも静かにお茶する。
珈琲の苦さが、じんわりと重みのなかを通過して沈み広がる
夏でもホット
私の持ち物は身体(からだ)だけかしら
これでいい
それでいて冷めるのはなぜ
空耳の雨音
お天気にやられた?
魂はしつこくなく
できる限りコンパクトなほうが好ましい。

なぜって、命ですもの

私が通過するという点で
晴れ晴れとしているのは確か
この身も、いつかきらめくでしょう。
空が青いわ


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断編――骨の魚
 田崎智基


――頭からの、否、魚の頭骨からの、心拍、が、土への、葬祭に触れる聴覚のえずき、もうずっと、くり返す、される、神経の、振手の別れの細密画のわずかな誤差が、明るさを少し減じ、流域を跨ぐ時間を行来し、いずれ、いずれと、登場して、クレッシェンド、デクレッシェンド、脱落する溺れそうな傘、雨降り、の響きの轟く空、気、感の、抽象された女の子の服、あまたの心の沈む海、色の溶け合う、大きく口を開いた、流花が、あり、鏡の中を誰かに見せまい、見せよう、と、どんどん耐え難くなってき、喉を切って、壊そう、壊されようと傾く双子の月の、入れ替わって生ぬ夜の、欠落を塗り潰そうと、復する薬を独白の暗がりから、嘔吐して進む山道に当たり、旅程を辿っている最中、――





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ルーツ
 イシダユーリ


手の先がつめたい
爪を切るたびに
わたしはわたしを二乗する
おかあさんはおかあさんを二乗する
おとうさんはおとうさんを二乗する
つまり
わたしたちはわたしたちを二乗する
ルートこいびとが
ベッドでおなかをだしてねむっている
ルートおかあさんが
受験問題集をやぶってなげつける
ルートおとうさんが
青年だったころの写真をなでている
朝夜昼
手の先がつめたい
二乗された
わたしが熱をすこしずつ
わけあっているから


おとうさんが
木の影で
ギターをひきながら
日米安保に反対を
している
おとうさんは
最後に
礼をして
木を削り取っていった
おかあさんが
それを
うけとって
日米安保のことは
なにもいわず
木を
運んでいった
たぶん
そんなふうにして
わたしはうまれた
ただしくは
まず
おにいちゃんがうまれて
わたしがうまれた
わたしたちはフィルムだった
生えてきたわけではなくて
うつしとられてきた
わたしたちはわたしたちを二乗する
だから
あなたはひとを憎んでも大丈夫です
あたまのなかなら殺人も強姦も大丈夫です
そう理由づけて
わたしはフィルムをかくした
ロックとかパンクとかアンダーグランドとか
ニューウエイブとかノーウエイブとか
ジャパンとかバウハウスとか
ノーニューヨークとかロンドンコーリングとか
やーさーしくーなりーたーい
たくさんのフィルムをかくした
わたしは二乗されたけれど
ひとを憎んでも大丈夫じゃなかったし
あたまのなかなら殺人も強姦も大丈夫じゃなかったし
大丈夫なことなんてたぶんなにひとつなかったけれど
わたしは
まだ二乗されて
森を抜けて都市を抜けて
また家に帰りつづけている


手がつめたい
さみしくはない
うそだ
ほんとうは
さみしいし
ずっとはなしていたい
わたしのはなしを
ずっと
おとうさんや
おかあさんや
すきなひとたちの
かおにつばをはきかけるように
わたしのはなしをぶつけつづけたい
けれど
あたまのなかなら殺人も強姦も大丈夫なんかじゃないように
だれかのかおにつばをはきかけるきもちをもつことも大丈夫なんかじゃない
手の先がつめたい
さみしくはない
もつだけの熱は
二乗されたわたしと
わけあってきたから
森を抜け
都市を抜け
田舎を抜け
駅を抜け
商店街を抜け
家に
帰るまでずっと


わたしは
わたしを
たぐりよせる
おかあさんも
おとうさんも
たぐりよせる
わたしを
たぐりよせる







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ウニカウル
 フユキヱリカ


 
メリーゴーランドにのりたいの
あの白い一角がいい


かげろうゆらめく
君の瞳に反射する
ひかり

昇華した太陽が
並んだ影を焼き付ける
アスファルト

蝉時雨を踏まないように
君がひとつ
またひとつ
止まりながら避けてあるく


何か言いかけても
おいで
おいでする
つむじ風に
かき消されてしまう



外人墓地を抜けて
濡れた緑の匂いが濃くなると
君だけの遊園地が
そこにある



君は、
溢れてしまわないの

なぜ黙ってるの



君の目には
夜が映っている
まっくらな
まっくらな森へ
碑を指す
輪郭のぼやけた二等星が
一筋の道を射す



その世界を守る
君は
幸せそうに微笑む



はしばみが
らくようするころ
樹の下で出会った
誰かを好きになって

やがて辺り一面
銀世界になれば
向こうの山のふもとに
まっしろい駿馬が
いななく


海岸通りのかわいた風がふく
あたたかい街にうまれおち
木枯らしにのることさえ知らない君に
君にも見せたいんだ


絹のようなたてがみの
首元に抱きついて
高鳴る小さな胸
破れそうで
苦しいくらい
駆けまわると

ぼくらをのせて
飛ばずに凍みた
綿雲の切れ間を
しずかに昇っていく


君の肩に掛けた
ショールが落ちると
眠ってた大地が
またひとつ呼気をする



しろい一角がいい
という君が眠る背中に
みつめられるのを恥じらう
星をあげよう


ウニカウル
きっと君を守る名前、だ


.



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低い場所(秋)
 えあ

壊れやすい硝子の器
垂れる、甘さ
その回りを透かしながら
あたたかさを保ち
寄せる水にさえ
羊を数えて眠ります
夜だけ血は増して流れでる
ぽっかりと
浮かぶ海は少し寒い
かたちのない子宮
わたしは拠り所を歩いている
耳元へ
遠くても聞こえる
貝殻に詰る内側の微熱
崩れないように泣くのは難しい
また、口をつける場所を探している
わたしの手のひらのつくる窪みまで
集まりはじめた
ひかりは多いほうが適している
果実がぽとりと落ちる頃
再び熱を持ち始めた喉元に
帰っていった波のない海に
わたしは戻っていく




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スクラップヘブン
 5or6


暗幕、、静寂、暗転、静寂、、、、、とは、幸福は、に、が、を、幸福、には、幸福、から、幸福、弛緩、な僕と、も俺を、に、とって、の、女性、姿から枠収めろよ、枠だ、泣き寝入り、廻るでしょ、のち、する次第、教えてください、止めようか、ちじ、ょう、垂れてしまって、マジ、許して、来期から独り善がり、模様替えしよう、材料、設定、昨日えげつない、ぬいぐるみ、の布地も好きで、すよ、ね、誰だよてめえ、約束、掴んだ、駆けろ、載れ、優男、手配り、正にそそる、加えろよ、全身キモい、大衆、飲んでんだろ、財布、その後、彼は赤ら、立ち、、吐くなよ、難、ジーンズ、許、藍染だよ、なにゲロって、うわっ、追加募集入り、、泣いてるよコイツ、誰だよ、よろしくお願い致しまーす、年寄りかっ、つーの、シンメトリー、都合いいじゃん、名前そうなんだ、朝までかよ、、ちじ、ょう、か、映画、これ、観んの、マジ、おい始まったって、

「スクラップヘヴン」

映写機の世界

本当の事は隠して
やさしさで殺す
片目の女がくれたクリスタル
ビニール袋の虐待児
バスに乗って政治家かばって自殺しますから
そっとしといてくださいよ
代わりにいってもいいですよ
デスクの中だよ
肩の力抜いたら?
むかねーよ


全部だよ
本物だよそれ

そんなとこ
とっくに探したよ

血も涙も無い奴だな

腹を蹴りあげる
腹を蹴りあげる
腹を蹴りあげる
腹を蹴りあげる

想像力
かけてんじゃないの?

復讐
ヘブン

便所の中で依頼を聞いていたら

精神病棟で親父が飛び降りた

想像しろよ
ホームレスに銃を渡したらどうなるんだ

想像しろよ
想像しないクソみたいなクソみたいで
ボンネットで踊ったら
車に乗る
スカイブルーの
クロスした道を
しこたまブン殴られたあいつがあるいて
片目の女に
笑われて
きみを本当は
助けたかったんだ

ゴミのようなビルを見ながら
遺骨をばらまくと
白くなって

権力に暴発しにいった
あいつに
逢いたかったから


白いクソしたんだよマジで
トイレ掃除のプロだ
ペーパーねえよ
ヘブン

すべて吹き飛ばせばよかった
銃だ銃銃をくれ
奪わせてくれ
銃だ
殴らせてくれ

片目の女から貰ったクリスタル

ふざけんじゃねぇぞ
ふざけんじゃねぇぞ
ふざけんじゃねぇぞ
ふざけんじゃねぇぞ
ふざけんじゃねぇぞ

あぁああぁああああああああああああああ青色のスカイ

コンクリートで
血塗れの
錠剤を吊して
窓ガラスからの光

トランクケースを持って
出ていって
海と陸の間を
駆け抜けて
溝にはまって

笑って

爆弾つまったクリスタル投げた
そして
目を瞑ったら
白い綿色のヘブンが高速で持ち去ってしまって

蜃気楼

THE END

…なぁ、お前、金、俺に払えよ、バカ野郎、お前が観てー言ったからだろ、つーか、

駅どこ?






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