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 眠れぬ夜のハーブティー
© 菊屋穂乃莉 
作者のサイト 
 R指定:---
 キーワード:お題 短編
 あらすじ:お題短編集から、一話抜きだしました。一口サイズのお話です。
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 シャワーを浴びて、彼にパジャマを借りた。パジャマはぶかぶかで袖とズボンの裾を折り曲げて着て、初めて彼のベッドで眠る。

 でも眠れない。体が痛くて。
 まだ彼がはさまっているみたいで。


「眠れないのか?」

 大きな手が僕の肩をさすってきた。
 隣で寝てた彼は起き上がり、電気をつけて部屋を出ていった。

 帰ってきた時はトレーに何か乗せていて。ティーセットかな?

 ベッドにトレーを置くから、僕も体を起こして座った。
 ティーポットから甘い香り。

「アップルとカモミールのハーブティー…って、飲める?」

「飲んだことないけど、…君がハーブティなんて、意外だね」

 だって、彼って野球部員で、もろ体育系なのにさ。ちょっとミスマッチだよね。


「お袋の趣味につき合ってるうちにけっこう好きになってさ」

 そう言って、カップに注いで渡してくれた。
 一口飲むと薄甘いお茶。ホントだリンゴの香りがする。


「寝つきが良くなるんだって」

「へえ…」


 彼が僕の顔に触って、「まだ、目が腫れてるな」って言った。けっこう泣いちゃったんだ僕。

 だって…無理矢理だったんだもん。一緒にテスト勉強しようって誘われて、この部屋に来たのに。


 ハーブティーを飲み終えて、電気を消して、また二人でベッドに入った。
 彼のたくましい腕が抱きしめてきて、

「無茶して悪かったよ。ホントに、ずっと欲しかったんだ。…お前のこと」

 って言った。


 僕はまたちょっと涙がにじんだ。まだ「好き」って言ってなかったね。

 でも言ってあげない。明日まで。

 甘いお茶なんかで、ごまかされてあげないんだから。










2008/11/07
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