[1] タイム・ラグ
By つきな
12-28 00:20
 
Fict 月間テーマ詩
   詩りとり
 未投稿作ばかり...
 
W53T
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[4] By あみね
09-19 03:31
 

アマンダ・グレナデン


向かって右側の
ひたいからまぶたにかけて
光沢を帯びた柘榴の果肉色が
ざっくりと開いていた

ガーネットというより
ルビー色の縦筋は
鮮やかな爪の形に
深く切れ込み
長くくっきりとした傷口をかたどっていた

ルビー色の直線を
指先でたどり
閉じ合わせたい衝動に駆られ
辛うじて 果皮の部分に
ゆるやかに触れる
と、
瞳を閉じ ごろごろと
咽喉を震わせ
ニャアと かぼそい声を出した

前肢をそろえ
静かに座ったまま
次に続く愛撫を待つ、アマンダ・グレナデン
閉じた瞳に 震える咽喉に
カーテン越しの陽光
白く揺れて


隣りのベッドで眠る猫は
ひたいの傷も癒え
くうくうと寝息を立てている
数日前の傷跡も その犯人もおぼろに
柘榴の果肉色を
透明な粒立ちを
わたしの内奥に
記憶の細胞として残したにすぎなかった

指先の肉球を
そっと つまみ
使いづらい猫用爪切りの
刃先に集中して すばやく
爪先をカットし始める



(月間テーマ詩“爪”未投稿作)
 
pc
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[3] By あみね
09-19 03:03
 

僕はこの空に恋を奪われた

経験したことと
学んだこと ちっとも
平衡していないことに気づいたとき
空が消えて
スパイラルなループが
降ってきた

ループをくぐり
自転車を漕ぐ
わかってるつもりで
忘れた空に向かう

口をすぼめて
ゆっくり すこしずつ
息を吐きだし
口を結んで
ゆっくり すこしずつ
息を吸いこむ

恋を続けるつらさと
恋をあきらめるつらさと
平行線上にあった日々

無限大に広がる空を君は選んだ
それぞれの空を
それぞれの風を
君と僕との間に残し

喜と怒と哀を楽しむ
喜と怒と哀を楽しむ

スクランブル交差点
ゆれる信号機の
もどかしく広がった深みに
僕は奪われていく
ムクドリのさざめきの遠くへ
無限大の明日へ
自転車を走らせる

口をすぼめて
ゆっくり すこしずつ
息を吐きだし
口を結んで
ゆっくり すこしずつ
息を吸いこむ



(詩りとり“僕はこの空に恋を奪われた”未投稿作)
 
pc
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[2] By あみね
12-28 00:26
 

街のあちこちで
冬仕度がはじまる
庭先の植木が
きれいさっぱり
整えられ
空き地の草は
モーター音とともに
刈り取られていく

暖かな午後
鮮かな彩りのパンジーや
トリコロールカラーの葉ぼたんを
植え込む人がいる

風の冷たい夜
街路樹に着せられた
イルミネーションに
精いっぱい
背筋を伸ばし
街の色とリズムを
すくって歩く


牝猫が脱走した晩は
この秋一番の寒気
息を弾ませ
ジグザグすり抜け
縦横無尽に逃げる

草を刈られた丘に上り
全力疾走で跳ぶ
とても気持ち良さそうに
軽やかに 力強く
むきだしの土を
蹴り上げていく

ふり向いた猫は
目を丸くして
さも得たり顔
日頃の鍛練の成果を確信して
嬉しそうに駆け抜ける

朝に晩に
階段を駆け回った猫たちは
ショーシャンクの空を
目指していたのか

スピードとジャンプ力
しなやかな野性に
嫉妬とあきらめを被せ
わたしはただ見守り
静かに応援し始めた

臆病な牡猫が
心配そうにわたしを見上げ
鳴いて訴え続けている

大丈夫だよ
疲れたら帰って来るよ

くぐもった空の下
足元の猫を抱き
風を斬って駆け回る牝猫の姿を
そっと追い続けた
ユーミンのダウンタウン・ボーイを
同じフレーズばかり
口ずさみながら
勝ち気な牝猫といっしょに
臆病な牡猫といっしょに
わたしも丘を駆けていた



(’08年11月テーマ詩“かける”未投稿作)
 
W53T
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