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線をまたぐ(メイド・イン・チャイナ)
 桃弾



袋の中には寡黙な柿と果物ナイフ
食欲の哀しみが立ち食い蕎麦を囲むホーム
も少しで日付が変わる
大宮をこえる最終電車が秋の灯を点して滑り込む
雨の音 重い荷物と喫煙所 喝采のように散る枯葉

座り込んだ若い女は
手首をまわしながら先にゆけ

くだをまく
ニポンジンだいすき
ニポンジンみなつめたいからだいすき

駅ビルのランプが明滅を三回
くりかえしてから消える一日が終わる寸前の合図

絡まった安いヘッドフォンのコード
メイド・イン・チャイナの夜鷹が
痙攣しながら静やかに唄う

カミサマはいつもルスだからね
クライトコいこうよサンマンエンで

籠にいっぱいの洗濯物
湯気の向こうにはシアワセがあった
表札には犬の名前もあった
大宮をこえる最終電車がホームから
女たちをまた今日から遠ざける

アタシおいてってくらさい

よっぱらいはきっと
まだ
ホームでくだをまいている
やっちまえやっちまえ
飲んで効くと騙せばいいよ
それとも、もう捕まった頃だろうか

空き家の庭には柚子がたわわに
まだ乳房の堅かった妹はアタシよりずっと頭が良かったんだ
なのに
オトコたちは足りない指で札束を数えた
ひづけがかわってしまう
もう少しで
せめて
乗換えの駅につくあいだに今日のゆめを
どうぞ
もう貯めなくてもいいよ
もうビール・ケースの陰でぶたれなくていいの
約束を待っている顔で席に座る
柿ひとつの淋しさを載せて
アタシは少し身構えながら眼を閉じた
満開の花が揺れている
ねえ、あれ
なんて花だっけ


 


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冬が消える
 及川三貴



晴天の空間に
眩暈を誘いながら在る 誰
敷石の上に薄い影投げる日が
暮れる 薄刃の風が

私やお前を切るのだろう
誰 曝して満ちた

静か 冷えてゆく
夜か 息か





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DAWN
 5or6

淋しさは沈殿し
虚しさは気化する
切なさは沸騰し
苦しみは凝固する

すべての反応は酸素と化合し

すべての闇は始まりの朝に
変化する

最初からだ
どんなに積んでも
終わらない石積み

小さな子供達が泣いている
こっちにおいで

その手にした石をみんなで重ねよう
黄金率を作るんだ

誰にも邪魔されない
完成された美の元
調和と平穏の頂きで

祝福を全ての者達に注ぐ

それは神じゃない
それは信仰でもない

絶対的な光

安らぎの暖かさは
きっと憎しみを消すだろう
恐れないで

そのひび割れた手のひらも
いつかは柔らかい手のひらに戻るから

苦しみの中の喜び

喜びしかない世界なんて無い
だから僕達は言葉をかける
大丈夫だよ
いつか日は昇る

誰も信じない夜に失い
誰かが助ける朝に気付く
誰だって一人ぼっちじゃないのだから

孤独は存在し
孤独は消滅する

崩れ去ったものを
一緒に拾い集める人が
いったいきみに何人いるのだろう

築き上げるのは
気付くのは

それからの
これからの

きみの生き方

淋しさは沈殿し
虚しさは気化する
切なさは沸騰し
苦しみは凝固する

すべての反応は酸素と化合し

すべての闇は始まりの朝に
変化する

夜明けにようこそ

全ての過ちを無にするときが来たんだ

崩れ去ったものを
一緒に拾い集めてくれる人が呼んでいる

夜明けにようこそ

雲がまるで生きてるかのような朝焼けの中のきみ

これが

僕の夜明けなんだ



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(甘受に困るAg)啜泣くシンタン
 漆
 
 
 
今度、カーブを曲った先に視た物に好かった事などひとつも無い、最高の趣味は『軽蔑』の類であり、傑作の主賓は『抱擁』の類である、故に死ぬわけでもないのに拳銃を欲しがる。

呼吸の飢餓、渇仰の手淫、粛として、雌伏の屁、肥すシャツの迫は枕の下へ終う、故に反芻し未来の追憶を見る。

――偉大なる心酔法、我が掌中に有らん!――解く順を識らぬ繭、茶番は借りれぬか?――只の一度、――予想外に荒れた朝、睨み上げた陽に踊り狂う傍らを、ぶつ切り、こなた、みなこなた、故に潜熱は祭りを娶る。

若い林の淫りな白髪、結える男性の直立した嘘、直線からはみ出す垢、悲鳴、
生活、僕の目は腐敗を誘いながら、食す事はしなかった、指先を切る黄緑色の流水、
浅い睡りは筋肉を纏い、膨大に亡んだ時間の落とし仔、《煮汁》を啜る奴隷ら、かつて舞わした灯篭、行列の最後。

旱魃の泥濘を誦す、錯乱の素朴である、叛くことで抵抗する、僕を跨ぎ見縊って呉れ。

旧きは落款を齎し清きは、呑紅をも垂らし撲つ、メスフォライスの笑いに絞殺され、地盤を這い伸びる短気、
招待状を!
招待状を!
金曜の黄昏に、愁嘆の葉あれな、沈没し往くヒステラスをかごめ。

食い革められぬまま、消化し排泄することで、空腹は続く、
落胆の果てにはいつも、生死が有り余っていたのだ。

まるで無い、因って、銃口に指を挿すに至る。
 
 



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友達
 如月

耳を傾けて
名付けられた名前を
呼ばれた八月の真ん中で
大切にしていたアルバムが
白く焼かれている

わたしと同じような言葉で
話すあなたに
なりたくて、あなたを
わたしと同じような名前で呼んだ
そうすると
新しいアルバムが出来るから
わたしと同じような名前で、
呼び続けているとわたしにも
新しい名前が名付けられた

その度に、また
アルバムが増えて
広い八月の真ん中で
白く焼かれていくから
わたしと似ている
新しいあなたを
大切だった、
アルバムにしまう

耳を傾ける声に、
喉を枯らして呼ばれた
わたしが
アルバムにたたまれて
わたしと似ている
あなたがわたしと
同じような名前で
大切だったアルバムを
燃やし続けて
あなたに似ている
わたしの言葉の
新しい名前で呼ばれる
わたしが
広い八月の真ん中で
大切だった
あなたのような
あなたの眼球の液体に
映し出された
湾曲していくわたしの声が
いつまでも、
友達と叫び続けて
また、
白く燃やされるあなたに
似ていた、あなたの
名前を私はいつも、
思い出せずに
あなたを
白く、
燃やし続けている





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 嘉納紺


転じて飛躍またその最中

我と無色の吐息を煽ぎ

揺るがぬものよ個々とあれ

其はひとりあゆむものなれ

青くひかるものであれ

花の開くを音とする



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