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無題
 Mei
 


夢がまた落ちてゆきました
いつか僕たちはまぼろしの形をした記憶のなかに沈みます


君には誰も読んだことのない本を読んでほしい うまれる星の話 海に咲いた永遠の話を
世界中の誰も言葉なんて知らない 目を開けば僕たちは明け方に消えた波みたいに たちまち粉になって消えてしまいます
光の世界のなかですべてのものと融け合いながら 千回目の死を見つめ終わる頃に
泳ぐことをやめた真夜中の魚は霧のように薄く 広がってゆく


月も太陽も 人間も永遠も 何もかも 沈んでばかりいますね


風がやみ 夏に雪が降りだして 君が透明になったその時が
旅の終わりなのかもしれません





「(……)ね、」


「何がそんなに、悲しいの、」


「夢を、視ること。」





誰もいないホーム、電車を待たせながら君を抱きしめる。
星の見えなかった夜の終わりに、君は何を視ていたのだろう。
何もかも全てが眠りについた世界で、君の体温を、記憶する。
言葉は永遠のまえに消滅して、
僕は空に降る光を、視ていた。




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画像
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公転
 腰越広茂

事実を知ろうとしない者は、偽りにほろぶ。
と惑星が、述べる

言葉を
使用しているのに通じない
場合もある。
常に、とはいかないまでも
一言一句正確に発音しているのに、だ
私の内耳も
誤る時があるけれど

心は、深く広い、か
自分自身のことさえわからぬこともある
だろう。はてな?
こういう時は、事実を見るようにしている
可能な限り
この太陽系に日輪はひとつ
わたしたちは、公転すべきではないのか
生のレボリューション!



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休日のための胚胎
 しもつき七


鈍い油膜の海に腹まで浸かって
みどりいろの紙が浮いているのを祝福したあとは
ただ反芻しかすることがなかった

赤い渡り鳥が
うわずったように鳴く
錘がなくても死ねそうね
水はにがくて吐く

血液まで室温のあなたは再生などされません
おわってしまったパレードは椅子にくくりつけて
くだらない話をしながら流そう

誕生日が過ぎて
うみおとされる死
あなたの子宮は美しく曇り
しきつめられた綿

やがて川岸に立つ月曜日の旗を撃て


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無題
 Mei




君は暮れ果てた記号の森ふかくで永遠と出逢うだろう


僕は知っている 泳ぐのを止めてしまった魚 そして地獄を
君は目を醒ますことなく星を抱いている 月光を 浴びながら


甘い偽善へと沈んでゆく世界から離れた幻影の欠片
星の降る夜に世界は止まる
そう思ううち 眠りに落ちる





 春の晴れた日には世界の終わりがはっきりと見えてしまう。


 澄み切った瞳の奥には永遠が覗いていて、全ての言葉が意味をなくしてしまっていた。
 名前をなぞる指先は季節の推移のように何処かへと向かい、堰を切り雪崩る地獄の記憶を止めてくれた君に僕は依存する。


 忘れない。何一つ。





「依存させてください。」
「はいはい。」
「愛してます。」
「分かった分かった。」


 酔った二人は抱き合いながら横になって熟睡してしまい、店員に起こされてしまった。


 君を、愛してる。





雨の日の夜に星が降る


病み衰えて死に絶えようとしている恒星の向こうに見えるコル・カロリ 光が君を傷つけているから何もかも一切は永遠に辿り着けないでいるのでしょう
失われてゆく星星と共に沈む君の存在は 五衰に喘ぐ天人のように綺麗です 美しい夢の終わりに 記憶と溶けるダイヤモンド それは穏やかな世界の光


雨は果てなく星と星とに降り注ぎながら 君に赦されることを
待っています





 世界樹の前には一羽の鳥がいて、君は、眠りを知らない夜の湖に身を沈めたあと微笑した。
 黒雲の破綻から生じるヴェルトシュメルツ、機械仕掛けの鳥は世界の終わりから時を打たないまま僕をじっと視ている。


 星と空に醒める兆しはない。


 天使飼いの少女がまとう白いワンピース、長い睫に縁取られた大きな瞳が永遠を映す間は、偽りの渇きと、僕は別れる。





君を大切にしたい。


この言葉につけ加えることは、今のところ、何もない。







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放下着
 ホロウ


縮みあがった胸に刃を当て
手遅れになる前に唾を吐いた
恐怖はいつでもそこにあるから
怯えぬことよりも逸らさぬことを勇気と呼べ
割れた碗のように過ぎ去った日
真摯と呼ぶために省みるなら
色眼鏡をかけて自分を見ろ
口上だけの今日を肯定するがいい
出鱈目に書き殴られた罫線の23時
記すことも消すこともままならず
ただ
数え上げるだけで済ませるのが定めなら
何故に胎盤など切り落としたのだろう
死者の心が容赦無く浸水してくる
腰の上まで昨日だけの者たちに飲まれながら
この暦は誰のためかと
遮光カーテンをさぐる隙間風を見る
生き延びることを決めたなら勇気と呼べ
恐怖はいつでもそこにあるから
縮こまった身体を疎ましく思うなら
まざまざと迫りくる明日の脳天を
見据えたまま今日の日を眠れ
麝香猫の爪痕の夢を見て眠れ
この世の進化は外れた
だけど
捨てたものなど無い



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ひとつ つづく
 木立 悟





音のない息の浪が
寄せている
ひとつの曇の裏ごとに
くちびると闇はわだかまる


補色の先へ向かおうとする
水の上にしか映らぬ鳥
冬に軋る
冬は軋る


影の斜面の
影すぎる影
あり得ぬものがあり得るときの
手に重なる手のような笑み


はばたきかけてやめる鳥の
羽の背後に近づく暗がり
点りながら滅しながら
あらゆるものが在りつづけている


かたわらの冷たさ
おりたたむ火の色
まばたきに混じり
流れ落ちるものに重なる


ひとみよひとみ
唱は止まない
さししめす手に行方はなく
風は闇を抱いて明るい


荒れ野の冬に降る道をゆく
すがた失くした足跡の群れ
とどまらぬもの在りつづけ
とどまらぬもの在りつづく
































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